TSKの愛称で親しまれる《山陰中央テレビジョン放送株式会社》を中心に、メディアやイベントプロデュース、IT、不動産業など多彩な業務を展開する《TSKグループ》。グループ各社それぞれが時代の変化の風を捉え、革新的なサービスを創出するとともに、地域に密着した企業活動を推し進めてきた。
各社の経営規模拡大に伴い、グループ連携も強化している。2018年には、山陰の未来を担う若手や後継者を支援するグループ基金《さんいん未来・縁人(えんじん)》を設立。7社で年間1000万円の予算を捻出している。TSK社長で、グループを束ねる田部長右衛門代表(41)は、「環境や社会と共存しつつ、会社が発展していくために、社会貢献は不可欠。グループでタッグを組めば、財政的にも内容的にもより充実した支援事業を展開できます」と話す。
支援の中心に据えたのは、「地域伝統芸能」「地域伝統工芸」「地元スポーツ」の3分野だ。国内有数の山林大地主であるとともに、県内の文化芸術振興に注力してきた田部家の歴代当主。25代の田部代表も、幼い頃から多彩な伝統文化に触れ、その素晴らしさを体感してきた。「暮らしに根付いた地域の祭りや神楽、踊りは山陰各地に残ります。窯元は100以上もあり、紙漉きや塗り、染め物など様々な伝統工芸が随所で引き継がれています。しかし多くが後継者不足や経営難に苦しんでいます。私たちは地域の宝を残し、担い手を応援したいのです」。田部代表の口調が熱くなった。
支援事業の目玉の一つが、伝統工芸を受け継ぐ若手職人を紹介する独自番組《TAKUMI(たくみ)―山陰の創造者たち》だ。心に染み入るナレーションや美しい映像で作風や想いを伝え、視聴者やスポンサーからの評価も高い。昨年度には、「近代スポーツの父」として慕われた松江市出身の岸清一氏の名前を冠したスポーツ表彰制度を創設。第1回大賞には、世界なぎなた選手権大会で優勝した若手女子選手らが輝いた。今夏には、島根県出身のプロテニスプレーヤー、細木咲良選手を取り上げた1時間の特別番組もTSKで制作・放映した。「世界の舞台で活躍している若手選手の存在を、地元の人にもっと知って頂きたくて。将来的にはテニスのプロ大会などを誘致する考えもあります。スポーツには、主義主張の垣根がなく、皆が盛り上がれる力がありますから」と田部代表。地元からプロゴルファーを輩出するためジュニアの育成支援も始めている。